相続コラム~遺言書~

内容が違う遺言が複数見つかった場合の優先関係

内容の違う遺言書が複数ある場合、どれを優先すればいいのでしょうか。
そもそも、遺言書は1つしかつくってはいけないという決まりはなく、極端に言えば、相続人1人につき1通の遺言書をつくっても構いません。
ただ、それはあくまでも、それぞれの遺言書の内容が異なることが前提です。
例えば、まったく同じ不動産につき、ひとつの遺言書は妻に、もうひとつの遺言書は息子に相続させると書いてあったとします。そのように相矛盾する遺言書の場合は、どちらかを優先させなければなりません。

民法は、「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と定めています(民法1022条)。
その撤回の方法として、「前の遺言と内容の抵触する遺言がされた場合には、抵触する部分について前の遺言を撤回したものとみなす」(民法1023条1項)とあります。
したがって、さきほどの例では、妻への遺言書の後に息子への遺言書が作成されていれば、息子への遺言書によって妻への遺言書が撤回されたことになり、結果として、息子への遺言書が優先されることになります。

ここで問題になるのが、遺言者が撤回を意識していなかった場合です。
結婚直後に妻に自宅を相続させるという遺言を書いたのをすっかり忘れて、20年くらいたってから、息子に家を継がせるために息子に相続させる遺言を書いてしまうなどの例が考えられます。
遺言者が、妻への遺言書の存在を忘れていた、つまり、妻への遺言書を撤回しようという積極的な意思がなかったとしても、妻への遺言書は撤回されたものとして取り扱われてしまいます。

(執筆日:2016年9月1日)

公正証書遺言の作成方法

公正証書遺言とは、遺言者が手書きでする自筆証書遺言とは違い、公正証書によってする遺言です。
公証人という法律実務家が、遺言者の意思を確認し、文書にまとめて作成します。
通常は、全国各地にある公証役場に遺言者と証人2人が出向いて作成してもらいますが、病気で入院中などの場合は出張してもらうことも可能です。ただし、この場合は出張費がかかります。
作成された公正証書遺言の原本は、公証役場で少なくとも20年は保管されますが、保管年数は公証役場により異なり、遺言の場合は50年間保管するところも多いようです。

公正証書遺言は、飛び込みで公証役場に行っても急には作成できません。
弁護士がかかわる場合には、事前にFAXなどで原案を公証役場に送っておき、公正証書遺言を作成する日時を予約するのが一般的です。

作成当日は、遺言者の他に証人2人以上の立ち会いが必要ですが、相続人は証人となることができません。
友人などにお願いすることもありますが、プライベートな内容になるので抵抗がある場合は、公証役場に相談すれば手配してもらえることもあります。この場合、証人への日当が必要になります。

公正証書遺言作成の費用は、遺産の価額によって変わってきます。
費用は、公証役場のホームページにも掲載されていますが、事前に確認しておいたほうがよいでしょう。

(執筆日:2016年9月1日)

認知症の方が遺言をつくる場合の注意点

重度の認知症で、判断能力を喪失しており、既に後見開始しているような方であれば、原則として遺言書の作成は難しいと考えてよいでしょう。ただし、成年後見が開始している場合であっても、一時的に症状が回復した場合には、医師2人以上の立ち会いにより遺言書を作成することができます(民法973条)。

今回このコラムで取り上げたいのは、軽度の認知症で、少し物忘れが始まりかけている方です。
遺言者が亡くなった後、相続人全員が遺言の内容に納得すればよいのですが、一部の相続人のみが得をする内容であった場合、その他の相続人が遺言書の効力を争ってくる場合が考えられます。
その際の争い方として、遺言者の認知症を理由にする可能性があるのです。
この場合、争いたい相続人は、「遺言無効確認訴訟」を提起して、遺言書作成当時、遺言者に判断能力がなかったことを、医師の診断書や入院記録、通所していた施設の記録などを使って立証していくことになります。その立証はもちろん一筋縄ではいきませんが、遺言者としては、相続人がそのような争いを起こすこと自体避けたいところでしょう。

無用の争いを避けるために、自らの判断能力についてしっかりと記録を残すと安心です。
例えば、公正証書遺言の制度を活用して、公証人にしっかりと遺言の趣旨を伝える、また、その過程を映像で記録しておく、入院中であれば医師に頼んで判断能力に問題がない診断書を作成しておいてもらうなどが考えられます。

以上で述べたような対策は、弁護士が軽度の認知症と思われる方から遺言書作成の依頼を受けた場合に提案するものなのですが、ご自身で遺言書を作成する場合にもぜひ検討していただければと思います。

(執筆日:2016年9月2日)

遺留分を侵害する遺言をつくる場合の注意点

法定相続人には、それぞれの相続分が法律で定められていますが、遺言書によりその法定相続分を下回る取り決めをすることもできます。
ただし、民法では、遺留分として、兄弟姉妹以外の相続人の最低限度の取り分が定められています(民法1028条)。

例えば、相続人が妻と子供2人だけであった場合は、妻につき4分の1、子ども1人につき8分の1の割合で遺留分としての権利が認められています。
この場合に、夫が妻子とは30年以上別居していて愛人と同居していたとして、愛人にすべての財産を遺贈するとの遺言をした場合、妻と子どもは愛人に対して、それぞれ認められた遺留分を主張することができます。これを、遺留分減殺請求と言います。
極端な例ですが、遺産として愛人が住む土地1筆しかなかった場合は、愛人は妻子に対して、遺留分の割合で価額賠償をせざるを得ないことになります。
結果的に、愛人は価額賠償をするために土地を売るしかないかもしれませんし、借金をする必要があるかもしれません。

このように、多めに遺せばいいというわけではなく、遺留分の割合と効果をしっかりと理解した上で、遺言書を作成する必要があります。

どうしても遺留分を侵害する遺言書を作成したい事情があるのであれば、遺言書の末尾に「付言事項」として、そのような遺言書を作成せざるを得ない事情を追記することも考えられます。
あるいは、生命保険などで遺留分相当額の保険金を受け取れるように手配しておくこともよいでしょう。
また、遺産として土地以外に預貯金があれば、遺言によって、まず預貯金に対して遺留分を行使するように指定することもできますので、そうした工夫も大切です(民法1034条但し書き)。

(執筆日:2016年9月2日)

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