2017.08.25更新

A男とB女が不倫をしたことが発覚し、A男の妻であるX女が慰謝料請求をする場合を考えます。

 

このとき、A男とB女は、X女に対して不法行為という権利侵害行為をしたということになります。

したがって、A男とB女は、2人で連帯してX女に対して慰謝料を支払う必要があります。

 

では、このとき、X女がA男に対してだけ、慰謝料請求を免除した場合、B女もその免除の効力を主張できるのでしょうか。

 

通常の連帯債務の場合は、免除の絶対効と呼ばれるものが認められているため、A男の責任割合に応じてB女の責任も免除されます。

つまり、仮にX女からA男とB女に請求できる慰謝料総額が200万円で、A男とB女の責任割合が50:50であった場合、A男に対する免除の効果として、B女の慰謝料も100万円になるということです。

 

しかし、最高裁はこの点を否定しています。

不貞行為による損害賠償債務は、単なる連帯債務ではなく不真正連帯債務であるとして、免除の絶対効を否定したのです(最高裁判所平成6年11月24日判決)。

 

要するに、仮にX女がA男に対して免除したとしても、B女には免除の効力が及ばす、依然として200万円の支払義務を負うということになります。

 

以上は理屈の問題でわかりやすくするために200万円と金額を固定しましたが、実際には、X女がA男を免除したという点をとらえて、慰謝料の金額を検討する際、マイナスの方向に傾くこともあるかと思います。

投稿者: 港区西新橋の弁護士 吉利 浩美

2017.08.23更新

確かに日本人として生存しているのに戸籍がない、いわゆる無戸籍問題が社会問題となっています。

 

この背景として多いのが、民法772条の嫡出推定制度をめぐるものです。

嫡出推定制度とは、婚姻成立の日から200日を経過した後または離婚後300日以内に出生した子については,婚姻中に懐胎したものと推定する制度です。

 

例えば、A男とB女が結婚した後、A男のDVにより別居期間を経て離婚しましたが、離婚から120日後、B女はC男と結婚し、子どもを出産したとします(2016年の民法改正により、再婚禁止期間は100日に短縮されました。)。

 

子どもが生まれたのが離婚から150日後だった場合、嫡出推定制度により、子どもがA男の子であると推定されてしまいます。

したがって、出産の時点ではC男と結婚していたとしても、C男を父親とする出生届は出せないことになります。

 

もしA男の子として出生届を出すと、子どもはA男の戸籍に入ってしまいます。

それを避けるために、子どもの出生届をB女が出さず、子どもが無戸籍になってしまうというケースが多くみられます。

 

このような場合、原則として、A男の側から、子どもが生まれて1年以内に嫡出否認の調停を申し立てる必要があります。

しかし、A男の協力が得られない場合、もしくはそもそもA男と連絡をとりたくない場合、B女の側から採れる手続はあるのでしょうか。

 

そもそも、子どもの妊娠が離婚後であることについて医師の証明書がもらえる場合には、証明書を添えてC男を父親とする出生届を出すことができます。

ただ、今回のケースでは、A男との離婚前、別居期間中に妊娠していると考えられますから、医師の証明書の発行は難しいと考えられます。

 

その場合、ハードルは高いですが、子どもを妊娠したときに外観上A男との婚姻の実態がなかったことを証明する資料をそろえたうえで、法的手続を試みることになります。

DNA鑑定で子どもとC男との血縁関係を証明することも1つの方法ですが、それに加えて、A男とB女が別居していたことがわかる資料(住民票、引越の契約書等)も必要になります。

 

B女から申し立てることができる法的手続の方法は、大きく2つあります。

子どもの法定代理人として、A男に対して親子関係不存在確認の調停を申し立てること。

もう1つは、C男に対して強制認知の調停を申し立てることです。

(嫡出推定が及ぶ以上は、C男が認知に協力的であっても裁判所外の任意認知をすることができず、「強制認知」という呼称になります。)

 

いずれの場合も、調停の相手方が子どもの実夫に関してB女との見解を一致させたとしても、それだけで裁判所は申立を認めることはできません。

客観的に、A男とB女に婚姻の実態がないことを証明することが必要です。

 

(参照)

法務省:「無戸籍の方が自らを戸籍に記載するための手続等について」

 

 

投稿者: 港区西新橋の弁護士 吉利 浩美

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