2017.08.10更新

85歳の波平さんには、さざえ、かつお、わかめの3人の子どもがいます。妻のふねは2年前に亡くなりました。

 

波平は、唯一の息子であるかつおにできるだけ財産を残したいと思い、さざえとわかめには遺留分を侵害しない分だけを、つまり6分の1ずつを相続させ、残りの財産6分の4はすべてかつおに相続させるとの遺言をしたためていました。

 

波平はそれだけでは足りず、死期をさとった頃から、200万円、300万円と高額なお金をかつおに少しずつ贈与することにしました。結局、波平は亡くなるまでに、合計2000万円をかつおに贈与しました。

そうすることで、まとまったお金を生前にかつおに渡す事ができ、相続が発生したときにも、さざえとわかめの遺留分を差し引いた分、遺産の大部分をかつおに相続させることができると考えたのです。

 

では、波平の相続が発生した後、果たして波平の思惑どおりに事は進むのでしょうか。

応えはNOです。

 

具体的に考えてみましょう。

 

波平の相続発生時、遺産としては預貯金3000万円のみでした(わかりやすくするため簡素化しています)。

すると、遺言書の割合どおりに相続すると、かつおが2000万円、さざえとわかめが500万円ずつ相続することになります。

 

一見すると、さざえとわかめの遺留分は侵害されていないように見えます。

しかし、法定相続人の「特別受益」に該当するような多額の贈与は、遺留分を算定する相続財産の基礎に加えるという扱いです。

 

具体的には、かつおが生前贈与を受けた2000万円を遺産に加算し、5000万円が本来の遺産なのだと考えます。

遺留分は5000万円を前提に算定しますので、さざえとわかめの遺留分権は833万3333円ずつ保証されています。

したがって、遺留分侵害額はそれぞれ333万3333円ということになります。

 

今回のケースは、遺産が現金だけだったので、かつおは生前贈与を受けた分、あるいは相続した預金のなかから遺留分減殺請求に対する価額賠償としてお金で解決することができます。

 

しかし、例えば多額の生前贈与を受け、その贈与金は既に使ってしまっており、遺産は自宅の不動産だけというケースではどうでしょう。

遺留分減殺請求に対応したくても、原資がなく、泣く泣く自宅を売却せざるを得ないことになりかねません。

 

安易な生前贈与は、税金面でも痛い目を見ますが、相続発生後に、受贈者に予期せぬ損害を与えることになりかねません。

十分な検討が必要です。

投稿者: 港区西新橋の弁護士 吉利 浩美

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